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東京地方裁判所 昭和51年(ワ)10625号 判決

原告 株式会社志村商店

右代表者代表取締役 志村伝三郎

右訴訟代理人弁護士 伊丹経治

被告 榎本豊次郎

右訴訟代理人弁護士 二階堂信一

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し、金一九五五万円及びこれに対する昭和五一年一二月一一日以降完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決並びに第1項につき仮執行の宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

との判決。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、段ボール等製紙原料の回収、保管、販売を業とする会社であって、昭和四九年九月二日、訴外望月知子、同望月美佐子から、同人ら所有にかかる別紙物件目録(一)の(1)ないし(8)の土地(以下「本件土地」という。)を段ボール置場として使用する目的で、賃料一か月金二五万円、期間二年と定めて賃借したうえ、同年一一月上旬ころ、本件土地境界線上に、高さ約三メートルの鉄板製の塀(以下「本件塀」という。)を完成した。

2  被告は、別紙図面のとおり本件土地に隣接してL字型地形をなす別紙物件目録(二)の(1)ないし(5)の土地(以下「被告所有地」という。)を所有している。

3  ところで、被告は、被告所有地の地形がL字型で環状七号線(以下「環七」という。)に接する部分が本件土地に比し少なく、その価値が劣るため、従前より両土地の一括処分を訴外望月らに申入れていたものの、本件塀の設置により、被告所有地の地形が処分上不利であることが歴然となり、一括処分の目的を達しえないこととなった。そこで、被告は、本件塀を除去し被告所有地の本件土地との一括処分による価値の増大を企図し、そのため、原告が本件土地を段ボール置場に使用せんとしていることに着目し、環境悪化を阻止するとの口実で、以下の所為をなし、近隣住民をして段ボール置場設置反対運動を起こさせ(以下反対運動に参加した住民を総称して「反対住民」という。)、若しくは少なくとも反対住民の一員として、原告の賃借権に基づく本件土地利用を妨害し、原告及び訴外望月らに圧力を加えて両者間の本件賃貸借契約を解約させようとし、もって、不法に原告の本件土地利用のみならずこれにより得べかりし営業上の利益を侵害したものである。

(一) 被告は、足立区区会議員、同区島根町町会長の地位にあった訴外清水大蔵(以下「清水町会長」という。)に、段ボール置場設置反対運動を起そうと持ちかけ、ほどなく施行が予定されていた同区区会議員選挙に再出馬することとなっていた同人を巧みに利用し、反対住民の署名一二六名分を集め、右署名簿をもとに足立区役所環境部、足立保健所等へ段ボール置場設置反対の陳情をした。

(二) 昭和四九年一一月一九日、被告は清水町会長宅に反対住民多数を招集し、同所へ原告会社担当者訴外宮澤英を呼びつけ反対住民との団体交渉をしむけ、同月二一日、再び清水町会長宅で反対集会を開いた際にも訴外宮澤を出席させ、その際、被告をはじめとする出席した反対住民は、右宮澤より住民の不安を解消するに足りる誠意ある回答がなされたにかかわらず、原告が本件土地内に段ボールを搬入しようとするならば、被告らが本件土地出入口に座り込んで実力でこれを阻止するなどと激しく叫んで無条件絶対反対の気勢を示し、原告に対し段ボール置場設置を断念するように迫った。

(三) 被告をはじめとする反対住民は、それ以後数か月間にわたり本件土地付近に毎日見張り番を立て、実力で原告の段ボール搬入を阻止すべき体勢を整えていた。

(四) 被告は、昭和四九年一二月二〇日ころ、反対住民十数名とともに「廃品、段ボール置場絶対反対 島根町会」などと記載した大小数種類の立看板、プラカード、ポスター等を合計数百枚作製し、立看板類は本件土地周辺に林立させ、ポスター類は町内いたるところにこれを貼付した。

(五) 本件土地賃貸人である訴外望月らが反対住民と同一地域内で酒類販売業を営んでいるのを奇貨として、被告は反対住民多数とともに数回にわたり訴外望月方へ押しかけ、同人らに対し本件賃貸借契約の解約を求めもって、地元で営業している訴外望月らに被告らの要求が容れられないときは、同人らの営業に悪影響がありうるとの可能性を示唆した。そのため、同人らは原告に対し、反対住民との間に合意が成り立つまでは、本件土地の使用を差し控えてほしいとの申出を続けるに至った。

4  以上の被告らのなした一連の行為は、住民運動として許される範囲を著しく逸脱した不当なものであり、賃借権に基づき本件土地を利用し、段ボール等の製紙原料の回収、保管、販売の営業をなそうとしていた原告の意思を不当に抑圧し、これを差し控えさせるに十分なものであり、威力を用いて原告の本件土地利用及び営業を妨害したこととなり、違法性があるものというべきである。

5  これにより原告は、別紙損害明細表記載のとおりの損害を被った。

6  よって、原告は被告に対し、不法行為による損害賠償として金一九五五万円及びこれに対する不法行為の後である昭和五一年一二月一一日以降完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実中、原告が本件土地にその主張の日時に本件塀を完成した事実は認めるが、その余の事実は不知。

2  同2の事実は認める。

3  同3の事実は、いずれも否認する。

4  同4の主張は争う。

本件土地における段ボール置場設置反対運動は、本件土地周辺の町内会住民(主として主婦)が中心となって、島根町町会全体の意思として行われたもので、被告は、島根町町会支部役員としてこれに参加したにすぎず、個人的利害のため、反対運動を主唱したものではない。そもそも、本件段ボール置場は住宅地域の中にあり、塀で囲った空地に再生用段ボールを野積みにするもので、防災上も衛生上も極めて不都合であるから、付近住民としては環境保全の立場から反対運動を行うことは当然であって、その運動の内容も、原告担当者との交渉、関係官庁に対する陳情、本件土地付近に立看板の設置、ビラの貼付等にとどまり、その他の実力阻止もしくはその準備等の行動は行わず、法律上容認された範囲内における正当な住民運動といえるものであり、何ら違法性を有しない。

5  同5の事実は不知。同6の主張は争う。

第三証拠《省略》

理由

一  《証拠省略》によれば、原告が昭和四九年九月二日、訴外望月知子、同望月美佐子(以下訴外望月らという。)から同人ら所有にかかる本件土地を段ボール置場として使用する目的で賃料一か月金二五万円、期間二年と定めて賃借した事実を認めることができる。

二  ところで、右段ボール置場設置に対する被告ほか反対住民による反対運動の経緯についてみるに、《証拠省略》を総合すれば、以下の事実が認められる。

1  昭和四九年一〇月ころ、本件土地と被告所有地との地境いの確定がなされ、その際、立会った原被告双方及び訴外望月らの間で本件土地が段ボール置場として利用に供されることが話題となったことから、翌日被告は訴外望月方に赴き、右使用に反対の意思を表明した。

2  一方、右反対に対処し、本件土地を段ボール置場として利用し、かつその周辺の環境を保全する目的で原告は本件塀を設置することとし、昭和四九年一〇月ころその工事を開始したが、そのころ、本件土地に段ボール置場が設置されることを知った本件土地東側住民(主として主婦)を中心として、これに反対する気運が高まってきた。

3  住民たちが段ボール置場設置に反対する理由は、段ボール置場には、火災の危険性が高く、だにやねずみ等の発生の温床となりがちで非衛生的であることなどが主たるものであった。これに対し、原告はいわゆる野積みにしないため、段ボール上にシートをかぶせ、防火のため本件土地の囲いとして三メートルの高さの塀を設置し、水道を引き込み、小屋をたてて見張りを常駐させるほか、保健所に頼んで防虫消毒をなすことなどの解決策を用意していた。

4  被告は島根町町会防火部長として、その他同町会副会長石鍋栄次郎、同町会総務部長榎本義憲らが同町会役員として前記反対運動に関与するところとなり、本件土地の帰属する同町会二部ブロックの班長を介して近隣住民の反対署名を集めるに至った。右署名者数は島根町三丁目だけで一二六名に及び、その署名簿は最終的には清水町会長から昭和四九年一〇月一六日ころ足立区役所環境部に提出された。

また、同じころ被告を含む反対住民により所轄の西新井消防署に対し、本件段ボール置場設置に関して陳情がなされた。その結果、区役所環境部及び消防署はそれぞれ原告に対し段ボール置場についての説明を求め、原告会社社員訴外宮澤英が区役所及び消防署に赴き原告の対策を説明したところ、区役所、消防署の担当者はいずれもこれを了承し、段ボール置場として使用して差し支えないとの意向を表明した。

5  更に同年一一月二一日ころ、町会集会所において被告を含む反対住民七、八〇名と原告側担当者宮澤との交渉の機会がもたれ、その席上、宮澤は、原告の講ずる対策を種々説明したが、反対住民らはこれに納得せず、段ボール置場として使用することに反対の態度を変えなかった、反対住民の中には段ボールを運び込むのであれば、見張りを立てトラックの前に座り込みをしてでも阻止する等と発言した者もあったが、そのような強硬な発言をしたのは、男性一名(被告ではない。)女性二、三名にすぎず、他の八〇数名のものは、それに同調する様子ではなかった。集会の雰囲気は、住民が怒号するというようなこともなく、平穏であった。

6  その後同年一二月二〇日ころ、被告を含む反対住民二〇名くらいの者が、被告宅で「廃品ダンボール置場 絶対反対 島根町会」「火災の原因となる廃品ダンボール置場設置に反対」などと記載した百数十枚以上のビラや立看板を作製した。立看板は畳二帖大のもの一枚及びそれより一回り小さなもの一枚の合計二枚を本件土地の近くに環七に面した表側と裏側に設立し、またビラは、ベニヤ板に貼ったものを本件土地の囲りの地面に杭で立てたり本件土地付近の環七両側沿い一〇〇メートルくらいにわたって塀ないし建物の外壁に貼付した。なお、右立看板、ビラ等は、原告が賃借した本件土地上に立てられたり、原告が設置した塀に貼られたりしたものはなく、また、塀に直接反対の趣旨を書きつける等のこともなされなかった。

7  段ボール置場に反対する住民は、本件土地を段ボール置場として貸さないよう貸主である訴外望月らに求めて、同訴外人方を数回にわたり訪れ、ときには清水町会長、被告を含め一五名ないし二〇名の大勢で訪れ、夕刻に至るまで原告に貸すのをやめるよう求めたこともあった。しかし、その際における住民らの要求は平穏裡になされ、望月方にいる間大声を発するなどした者はいなかった。

そして、右の以外においては、望月方を訪れた際の反対住民の人数は、せいぜい一度に四、五人程度であるにすぎなかった。被告は、前記の多人数で訪れた以外に、町会役員として訴外榎本義憲とともに二回望月方を訪れ、段ボール置場として貸さないように求めたことがある。

このようなことから、訴外望月らは付近住民の反感をかい自己の酒屋の営業に悪影響の生じることを懸念し、原告に対し、付近住民の反対がおさまるまで、段ボール置場の設置を強行しないよう求めた。

8  その後、清水町会長が足立区区会議員選挙に立候補する準備などのため原告と反対住民との交渉は一時中断されていたところ、右選挙後の昭和五〇年六月上旬ころ交渉が再開され、清水町会長から段ボールをコンテナで出し入れすることの提案がなされたが右案が営業上採算に合わないとして原告がこれを拒否し、以来交渉は物別れの状態のまま現在に至っている。

三  原告は、被告をはじめとする反対住民は、本件土地に見張りを立て、原告が段ボールを搬入しようとすれば、住民多数を招集して実力でこれを阻止すべく準備体勢を整えていた旨主張し、証人宮澤英はこれにそう証言をしているが、同証人の証言は、右準備体勢が整えられていることを直接知ったというのではなく、(1)同人の出席した前記昭和四九年一一月二一日の集会において数名の者からそのような発言がなされたこと、(2)同証人が本件土地付近に行ったところ、地元住民が見張りをしているように感じられたこと、(3)他の車が本件土地に入ったところ、原告の車がきたと誤解され騒ぎが起きたこと、以上の事実から阻止する体勢が整えられていたものと推認したものである。

しかし、先ず(1)の発言についてみると、多人数が出席している集会において一部の者が全体の意向と関係なく過激な発言をすることはしばしば見られることであるところ、本件においては八〇数名の出席者のうち、わずか数名がそのように発言したにすぎず、しかも他の者はこれに同調している様子ではなかったというのであるから、見張りを立てるとの発言が住民の多数の意向をあらわしたものとは認め難い。次に、(2)の点については、反対住民の多くは本件土地の近隣に居住しているのであるから、集会において原告を代表して説明した宮澤証人が本件土地付近に行けば、その動静を注視する者のいることは当然ありうることであり、それを同証人が見張り行為と受取ることは十分考えられる。また仮りに同証人の証言どおり見張り行為がなされていたとしても、それ以上に、連絡網の整備、出動計画など明らかにするに足りる証拠のない本件においては、そのことから直ちに実力で妨害する体勢がとられていたと推認することはできない。(3)の事実についても、騒ぎが起きたといっても、その詳細は不明であり、その程度の事実から住民が実力で妨害をすべき体勢を整えていたと推認することは困難である。

以上のとおり、宮澤証人の推認の根拠とされた(1)ないし(3)の事実から直ちに前記原告主張事実を推認することは困難であり、しかも、これを否定する旨の被告本人尋問の結果に照らすと、前記宮澤の証言により原告主張事実を認めることはできず、他にこれを認めるべき証拠はない。

四  そこで、次に右に認定した被告の関与した反対運動が不法行為にあたるか否かを判断する。

先ず、反対署名を集め足立区役所及び消防署へ陳情した行為については、それ自体違法性のある行為として不法行為を構成するものでないことは明らかであるし、本件においては前認定のとおり陳情を受けた区(環境部)、消防署のいずれもが原告に対し、ダンボール置場として使用することを認める旨言明しているのであるから、右陳情等により原告の本件土地使用が妨害されたものでもない。

次に、昭和四九年一一月二一日の集会であるが、これは、反対住民に原告の対策を説明するため開かれたものであり、同集会の態様も前認定のとおり数名の者が強硬な発言をしたにとどまり、全体としては平穏なものであったというのであるから、右集会を開催したことあるいはこれに参加したことが不法行為となるものでないことは明らかである。

昭和四九年一二月二〇日ころになされた立看板の設置、ビラの貼付についても、そもそも、他人の土地利用が住環境を悪化するものであると考えた場合に、これに反対である旨を表明することはそれ自体違法となるものではないから、反対運動として看板、ビラ等により反対意思を表明することは、当該看板、ビラの記載内容が事実に反しあるいは相手方の名誉を毀損するものである場合、あるいは記載内容もしくは看板、ビラの利用の態様(大きさ、設置場所、枚数、その他)等から相手方の自由な意思決定を妨げるおそれのある場合など以外は許されるものと解すべきである。

これを本件についてみると、看板、ビラのいずれも記載内容は段ボール置場に反対である旨の意思が表明されているにすぎず、原告の名誉を毀損したり、虚偽の事実の記載がなされているものでもない。看板、ビラの利用の態様としては、右看板は相当大きなものであり(畳二帖分のもの一枚、それより一回り小さなもの一枚)、しかもうち一枚は環七に面して設置されており、貼付されたビラ、小看板は実に百数十枚以上に及ぶが、島根三丁目だけで一二六名の反対署名が集まったことを考えると、ビラの枚数が異常に多いとも言えず、また、その記載内容も、具体的な反対行動を暗示したり、原告に攻撃を加えるといったものではなく、単に絶対反対である旨を表明しているにすぎない。また、看板の設置にあたっては、原告の賃借している本件土地上にはこれを設置しないようにし、ビラの貼付についても、原告の設置した塀にこれを貼付することはしない等、看板の設置、ビラの貼付にあたり、原告の権利を侵害することのないよう意を配っていることが窺えるのであり、これらの点を総合して判断すると、未だ本件においては、相手方の自由な意思決定を妨げるおそれのある場合とは認められないというべきである。したがって、被告らのした本件立看板の設置、ビラの貼付は不法行為となるものではない。

最後に、本件土地貸主である訴外望月らに対し、原告に貸すのをやめるよう働きかけた点であるが、訴外望月らは酒屋を営んでいるため、付近住民から右のような要望を受けた場合、自己の営業に悪影響を及ぼすことを懸念し、これを拒絶し難い立場にあることは容易に理解しうるところである。しかしながら、そのような場合であっても、訴外望月らに、右のような要望をすることが直ちに不法行為となるものではなく、手段として暴行脅迫を用いる場合、あるいは自己の要求を容れない場合には不買同盟を結成する旨を表示するなど現実に差し迫った威力を示し、その態様が社会的相当性の範囲を逸脱していると認められる場合にはじめて違法となるのであって、平和的右手段で単に原告に貸さないよう要望するにとどまる限りは違法となるものではないと解すべきである。

本件において、被告ら反対住民が右要望のため訴外望月方を訪れた回数、人数、その態様は前記認定のとおりであり、回数もさほど多いとは言えず、また態様も平穏であって、訴外望月らに威迫を加えるといったようなものではなく、社会的相当性の範囲を逸脱したものとは認めがたい。原告代表者尋問の結果中には、訴外望月らが住民から不買同盟を結成する旨告げられたとの部分があるが、右は同訴外人らからの伝聞であるところ、同訴外人らと親族であり、かつ同訴外人らの営む酒屋営業に関与している証人望月昭三が、当法廷で証言した際には、右の事実に何ら言及していないことを考慮すると、右原告代表者尋問の結果を採用することはできず、また、他に被告ら反対住民が訴外望月らに対し、要求に応じない場合に現実に差し迫った不利益を及ぼすような言動をとったことを認めるに足りる証拠はない。

したがって、被告ら反対住民の行為は、訴外望月らに対し、原告に貸さないよう平和的に要望したにとどまり、不法行為を構成するものではない。

五  以上のとおり、被告が関与した反対運動については、いずれも不法行為を構成するものではないが、原告は、被告は自己の個人的利益を図って反対運動をなさしめ、もしくはこれに参加したと主張しているのでなおその点について判断する。

前記二1ないし8認定の事実によれば、被告が本件反対運動を主唱しもしくはその中心となって指導したとまで断ずることはできないものであるところ、《証拠省略》中には、被告が本件反対運動に参加したのは、原告主張のような被告の個人的利害に基づくものとの供述部分があるけれども、これらは《証拠省略》に照らしてにわかに措信しがたく、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

したがって、被告がその個人的利益を図って反対運動をなさしめ、もしくはこれに参加したものであるとすることはできず、被告が本件反対運動に前記認定のとおり関与したことをもって、原告に対する不法行為を構成するものということはできない。

六  よって、原告の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないのでこれを棄却することとし、訴訟費用については民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 宇野栄一郎 裁判官 房村精一 池田辰夫)

〈以下省略〉

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